研究とは、偶然の出会い、そして重要なのは、人との出会いである。電気化学を始めた頃は、石油産業の最盛期で、高分子化学、化学工学等の分野が主流であり、電気化学は、古くてあまりワクワクした分野ではありませんでした。金属の腐食、メッキ、古い時代の乾電池、等が主な研究課題でした。そこには、分子とか化学反応という問題をあまり取り上げられませんでした。
それを大きく変えた1つの成果は、本多・藤嶋効果と知られた半導体電極を用いた、太陽光での水の水素と酸素の分解反応でした。これを契機に、次から次へと新たな電気化学が生まれてきました。生物電気化学、電子移動に関する研究、各種センサー、リチュウム電池、燃料電池、半導体の微細加工、等々、今日のエネルギー・情報産業の中心問題に関する電気化学の発展です。
これらの発展を見てきた私たちの世代の一研究者として、常に思ってきたことは、その電気化学反応とはどういうものか?原子レベルでどんなことが起きているのか?という疑問でした。